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​古本屋の書評

「かわいい猫の飼い方BOOK」 井上優子

井上優子さんは、「猫を叱ってはいけない」というポリシーをお持ちの無類の猫好きの方。猫をきちんと飼育するためのイロハが項目別にコンパクトに書かれています。第1章は「猫は猫なのだ」です。そして、本の中のネコロジー講座という異色のコーナーでは、猫が出てくるオススメ映画も紹介されております。一つ目はハリーとトント、二つめは銀河鉄道の夜、三つめは時代屋の女房でした。作者の好みと時代背景が見て取れます。

「コンビニ人間」 村田沙耶香

コンビニで働く時間を軸に生活リズムが成り立っていて、それを心地よく思う主人公の女性。彼女の性格が、まっすぐ過ぎて、人間というより動物のようで面白かったです。小説なので当たり前ですが、周りを誰よりも観察していて、視野の広さを感じさせる反面、一般的な、「焦り」が無く、自分と他人を天秤にかけるようなことをしないので、「コンビニ」という現代人がひっきりなしに集まる場所で、不思議なくらいマイペースでどこかふわふわしています。でも私は、そんな彼女のような人が、「コンビニ」を全身で必要としているという所が、とても素敵だなぁと思いました。面白かったです。

「魔女のパン」 O・ヘンリー

パン屋の女店主、ミス・マーサの日常的で滑稽な恋のお話。マーサの恋のお相手はパン屋のお客さんで、マーサの心の中で勝手に美化され、妄想の中で良いように作り上げられてしまいます。もちろんそんな上手い話ではなく、恋は盲目なのですね。恋のお相手の男性は何も悪くないんですけどね。主人公がミス・マーサなので、同じ女性の私は彼女の心がわからないでもないと思ってしまいます。

「魚と白鳥」 小川未明

日本のアンデルセンである小川未明の教訓と、子供に対する慈愛に満ちた童話作品です。魚の子供は、人間の子供と同じく、まだ踏み入れたことのない世界をまばゆい光輝くものとして、好奇心いっぱいに胸を高鳴らせながら、その世界を見ることを期待しているのですが、世間を知り尽くす母親は、未熟な子供に対し、行動を制す言葉をかけ続けます。危険を顧みない行動で経験したことは、親の心子知らずと言うように、初めて子供の身になって、母親の偉大さを知るのですね。時代が幾ら変化しても変わりようのない教訓です。

「猛スピードで母は」 長嶋有 (小説)

芥川賞を受賞したこちらの作品。母子家庭で育つ小学生の男の子の、母に対するまっすぐな視点が、子供らしくもあり、母の恋人や、学校の友達に対する見解が、冷静で客観的で、大人っぽくもあり。大人なようで子供のような、子供なようで大人なような、そんな不安定な年頃の男の子がとても魅力的です。この作品で描かれる母子は、お互いに親らしさ子供らしさに欠けるのですが、それでも母と子の絆がバシバシ伝わってきました。

「ヘタウマな愛」 蛭子能収 (エッセイ)

​蛭子さんの今は亡き最愛の妻、貴美子さんとの出会いから別れまでを綴った作品です。漫画家という波のある生活を選んだ蛭子さんに、いつも寄り添い、支えた貴美子さんの蛭子さんに対する深い愛情と、子供よりも友達よりも何よりも奥さんといる時が一番楽しかったという蛭子さんのまっすぐな愛情が1冊の本にふんだんに詰まっています。正直で飾り気のない蛭子さんの文章がストレートに胸を突いてきます。

「生きてるだけで、愛。」 本谷有希子 (小説)

素っ頓狂で喜怒哀楽の激しい性格の20代の女性は、彼氏の家に転がり込み、部屋に篭ってインターネットをいじるニートです。こだわりが強く我が儘で、同情の余地が限りなく無いのですが、その生活から抜け出そうと全身全霊で社会にアタックする姿が痛ましくもあり、健気でもあります。一生懸命に繊細で激しいので、これ以上精神分裂しないで!と心配しつつ、その奇怪な行動についつい笑ってしまいます。本谷有希子さんの文体は、天性のリズム感を持ち得たドラマーがプログレを演奏しているようです。そんな不思議で魅力的な作品でした。

「虫けら様」 秋山亜由子 (漫画)

絵本作家でもある、愛のある虫を描く漫画家さんですが、なんと出身はあの少数個性派漫画雑誌のガロなんですね。虫けら様はちくま文庫にもなっていて、可愛い虫のミクロな世界を古典的なストーリーで描いています。虫が本当に可愛いので、当たり前な自然の摂理が、残酷にも美しくも見えます。旅のお供に鞄に忍ばせたい1冊です。

「明日に向かって捨てろ!!」 BOSE(スチャダラパー) (エッセイ)

断捨離ができないBOSEの私物がたくさん出てきたり、しまおまほさんの、物を捨てない住人の住むバランスの取れた森のようなご実家が出てきたり、物を持たない暮らしの美徳が取り上げられている現代の反対を行く内容で、とても面白かったです。外出先で読んでしまったら、一人で笑いをこらえきれずに、恥ずかしい思いをしてしまうかもしれません。でも仕事の休憩中などに読むのがオススメです。気持ちがほぐれますよ!

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