HOME > 遊びの小部屋 > 古本屋短歌の小部屋

​仕事をしながら歌を詠む

風向きが 変われど変わらぬ 平地の案山子  私の本棚 重なり合って

駅弁と サライ片手に 小田急で  旅路に添える 句を読みながら

憧れの 銀幕女優に 思いはせ  彼女の自伝 涙して読む一人

逃げ水を 汗も拭わず 追いかけて  庄野潤三 読み夏はうつろ

丁寧な 家事は一つの 技術へと  暮しの手帖 主婦の鏡なり

古雑誌 かつて話題の 流行が  今に新しく 胸躍らせて

​学校で 学んだはずの 日本史を  社会に出てから また学ぶ夜更け

都会にも 小さく咲く花 見つけては  名前もわからぬ 我が無知を恥じて

多種多様 各地の本屋が 集い合い  結託し競う 古本まつり

​古本屋 カサつく手のひら 指の先  幾度ページを めくれども

​空見上げ 今日あとすぐで 終わるよと  読みかけの本 読破し就寝

古本に 挟めた手紙 領収書  夢みて当たらぬ 宝くじ連番

​道すがら 古本まつりに 出くわせば  思い出したかと 本に言われて

思い出の 「時間」を探せる 古本屋  インターネットに 無いものが有る

文学に 悩んで良いと 励まされ  前に進めぬが 気持ち楽かな

梅雨が過ぎ 真夏の日差し ジリジリと  古本照らし 状態ヤケ有り

古本に 関することなら お任せを  時代に合わぬか アナログ店主

本読めば 見知らぬ言葉に 遭遇し  国語辞典を 引く昼下がり

​厚みある 哲学書買い 意気込めば  電車に忘れて これも哲学

夢追いて 本を100冊 読むべしと  車に乗って 古本巡り

東京を 古地図片手に 散歩して  江戸の街並み 知る老後かな

我が青春 恋したあの子が 読んでいた  サラダ記念日 寅さんの帯

​函入りの 本に挟めた 朝顔が  空気に触れるは 何年も先

奥付に 見覚えのある 蔵書印  恩師の愛書 巡り巡って

​夏の夜に 江戸川乱歩を 読み漁り  べたつく汗と 冴えるまなこかな

民宿の 茶の間で見つけた 山岳書  窓から見える 富士語りけり

この家に 嫁いだ際に 持たされた  花嫁文庫に 母からの手紙

孫のため 我の知識を 増やすべく  昆虫図鑑を 片手に風呂へ

散らかった 絵本開いて 思い出す  子供の心 親気づくとき

何を見て 何をどういかに 感じるか  芥川賞 目指して悩む日

昔見た 月刊漫画に 載っていた  あの読み切りは 探せばあるかな

定年後 庭の梅の木 描いてみる  私の老眼 印象派かな

本の処分 頭に浮かぶ 思い出を  端に追いやる 妻の一喝

豆を挽き 香り漂う 店内で  本棚見れば ゴルゴ充実

友達に 貸して戻らぬ 漫画本  保存用にと 手に取りレジへ

川のよに 起承転結 気にせずに  流れゆくまま 上中下巻

時刻む 歴史の流れ 指の腹  わら半紙へと 歩み寄り過去へ

追いかける 逃げ水のような 思い出に  答えるような 本を探して

図書館で やること忘れて 本を読み  時間を忘れて バイトも遅刻

公園で 氷のごとく 冷えた本  読み進むうちに 手に馴染んで

母の字が 母の蔵書で 眠る日々  付箋ひとつも 母の優しさ   

子供の本 読み聞かせてから 仕事へ向かう  「ぼくは王様」 耳に母の声

​菊の花 天を仰いで 咲き誇る  母の御霊に 句と謝罪、感謝